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2008年4月 3日 (木)

夢の中歩くように

旅の二日目は石川県のおとなり、富山県へと足を伸ばす。氷見にて現在開催中の藤子不二雄A展を観に行くためだ。ホテルの朝食バイキングで満腹になって山用のインナーを着こんで靴も履き替え毛糸の帽子をかぶり…部屋で待機。けっこうな吹雪を小さな窓からお茶をすすりつつずっと眺めていた。平日の午前中に、知らないまちのホテルで一人過ごすというシチュエーションを楽しんでいたのだが、いつまでたってもやまないので意を決して外に出た。まずはホテルの近くにある尾山神社というところへ気の向くままに。鳥居のむこう、見上げた階段の上に見える神門の古そうなステンドガラスにロマンを感じた。庭園をてくてく歩いて、雪のふる景色を楽しんだりした。セルフタイマーで写真を撮っていたら、旅行者風のかわいい女の人からニコリと「撮りましょうか?」ととつぜん話しかけられてドギー&マギー!お返しにわたしもシャッターを押して少しお話をしてからさようならと別れた。

Oyamajinja
尾山神社にて。

昼前くらいに金沢駅に行き、高岡・氷見方面の列車時刻表をチェック。すこし時間があったので、お土産やさん街をうろちょろして目移りする。ふくさというフワフワモチモチの皮に包まれた粒あんのおかしをひとつ買って、待合室でモソモソと頂いた。定刻どおりにJR北陸本線・高岡行きは発車。さっきのふくさ、電車の中で頂けばよかったなあと少し思いながら大きな窓から見える景色はどんどん真っ白に。高岡駅で氷見線に乗り換え、2年半前の夏に行ったときには調べていったにも関わらずその日だけ点検でタイミングを外したハットリくん列車に期せずとも乗車することができた。氷見の名物、ブリを大々的にフューチャー、立山連峰をバックにハットリくんらが舞うというダイナミックなデザイン。車内もハットリくん一色で、車掌室の近くにはA先生の生サインが!地元の高校生軍団がじろじろ見るのに耐えつつカメラをかまえてここぞとばかりにパシャパシャ。

Shanainosign
サイン!

氷見線はずっと湾に沿っているので、景色が海を臨んでいてとても壮観だ。運がよければ海越しの立山連峰が見えたはずだが、晴れオンナパワーはここで発揮するに至れなかった。しかし雪のふる海と小さな島たち、たくさんの海鳥がいる眺めはザッツ・非日常!氷見に到着して観光案内所でお目当てのギャラリーまでのアクセス方法を伺った。かなりの雪が降っていたので、タクシーを使って行くことに。タクシーのおじさん(水島新司似)にお昼の食事ができる場所や自分の素性をペラペラと話してほどなく到着。4年前に品川で開催したA先生の展覧会時のポスターに似たデザインの赤い看板がドーーン!と構えてあり、それだけで胸がドキドキと高鳴った。

Galleryentrance
潮風ギャラリー入口にて。

コートに積もった雪を払って入ってみるとお客はわたし一人。わざわざ東京から一人でこんな日に来るなんて…と驚かれつつもゆっくり観ていって下さいねと受付のお方がおっしゃってくれ、原画も、原画のコピーも、トキワ荘14号室の再現セットも、蔵書コーナーも、すべてゆっくり贅沢に堪能させて頂いた。再現セットのテーブルは手塚先生にもらったそれじゃないなーと思いながらも、宇宙に匹敵する広さの四畳半を目の前にしてクラクラする。靴を脱いでじゅうたんの上で読書できるコーナーでは、未読だったジャンプSQの新連載コラムや荒木先生の読み切り(岸部露伴は動かない)も読むことができた。窓から見える景色はお世辞にもにぎわっているとは言えない港町の商店街のさびれた様子、それに吹雪のフィルター。とても静かである。とうに冷たくなったペットボトルのお茶の残りを飲み干して少しだけ寂しくなった。それでもぜんぜん悪くない心地。

Kishiberohanhaugokanai
石川県にはこんなオブジェが!
次回はぜひにこの前でジョジョ立ちしたいものよ。

これからどうしようかなと思っていたところにギャラリーのボランティアの方が声をかけてくれて近くの、とあるお寺さんに行かないかいと。その名前を聴いてドキッとした。A先生のご生家なんである。一瞬で「少年時代」のお寺さんが思い出される。じぶんの状況が飲み込めないまま連れ出してもらい、お堂の中に入らせてもらい住職さんの心に響くおもてなしをいただいた。寺院内を案内してもらえることになり、まさかまた観られると思っていなかった手塚治虫先生から受け継がれたA先生の机を間近で観ることができた…。ほ、ホンモノじゃないか!廊下にはそこに泊まりに来たという園山俊二先生の原画や「愛…知り染めし頃に…」にも出てきた浮世絵風に描いたトキワ荘住人たちの似顔など、ここに来られなきゃ観ることができないものたちを住職さんの説明付きで独り占めすることができた。こんなスペシャルなこと、予想してなかった。ありがたくて信じられなくて、目が泳いでいたと思う。心からの感謝を伝えて、いや、伝えきれずにその場をあとにしたのだが外は雪がさらに強まっていた。

Byoubu
A先生によって描かれた屏風。かわいい。
裏は喪黒服造を模した達磨さんの画だった。圧巻。

お腹を満たすべく海遊館という港にある市場へ向かいたいと伝えたところ、送ってもらえて至れり尽くせりの氷見来訪。だだっ広い食堂にまたしてもわたし一人というシチュエーションでお目当ての寒ブリと甘エビのたっぷり入った海鮮丼を頂く。横なぐりの雪が降る様子をまたぼんやり見ていた。海と雪の景色は眺めていてもなんだか飽きないもんだ。お腹も満たされたので駅に向かうことに。ついさっきまで雪が降っていたのに、青空が見え隠れしだした。前もそうしたように海岸沿いを寄り道しながら歩いた。だんだんトワイライトな空になって、いつのまにか海鳥も砂浜に集まってきていた。1時間に1本というローカル線、次を逃したら暗くなっちゃうよと頭では分かっていたはずなのに駅まで行くのに道を間違えてしまい(ハイ、出ました!)、あらかじめ決められていたかのように目の前を乗るはずだった列車が通過。そんなわたしを地元のおばちゃんが民家の2階から見ていてニヤニヤしていた。ペコリと頭を下げるとなぜか奥に引っ込んでしまい、つげ義春の旅行記っぽいなーと我が身を傍観した。風はとても冷たかったけど、大きな思い出ができたなあと満足な気持ちだった。

Himinoumi
氷見の海を臨んで。
帰りはうそみたいに晴れた。

OtokonokoOnnanoko
ひとりでこういうことをしながら時間をつぶす。

雪のおかげでダイヤが乱れつつもうとうとしながらゆっくりと金沢に帰還、高岡に寄ってコロッケでも食べていく予定だったけどそれはまた今度。きっとまた来る。いったんホテルに戻って荷物を置き、この夜も金沢の美女にお付き合いいただくことに。地元の飲み屋さんに案内して頂き、ノドグロのおいしさ、白子焼きのソロ食い、念願の鰤しゃぶ&香箱がに、エトセトラエトセトラを堪能。このときに話したこととか、未来につながっていけばいいなと思った。いろいろお話をきいてくれてありがとう。なんだかわたしはこのとき、とっても素直に口から言葉が出てきていたような気がする。すてきな本もありがとう。こりゃー、ものすごくいいぞ。次は京都だな。この夜もいい時間にホテルへ戻り、えへらえへらと(次の日ふつうにお仕事のあの子をとっつかまえて)テレビ電話などに興じる。次の日はとうとう帰らなきゃなのねとちょっと寂しい気持ちで就寝。

つづく。

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コメント

うひょー、読み応えあったー。
ちらりとは聞いてたけど、こんな濃ゆい一日を
過ごしていたのだね。
漫画の神様が微笑んだ一日だったのねえ。
あの面白写真群の、ほんの一部なのがモッタイナイ感じ!

聞きたい言葉が全部聞けて、大丈夫だって確信して、
ホッとしたのですよ。あの夜は。
また飲もうぜい!

投稿: kaori | 2008年4月 4日 (金) 21:46

>> kaoriさん

そうなの、濃ゆい濃ゆい一日だったの!
大雪も夕焼けも海鮮丼も堪能できたし、ジョジョの擬音オブジェが
見られなかったとしても満足極まりない感じよ〜。
面白写真群、2年半前に行ったときのと比べて見たらまた
それはそれで面白かったよ!やっぱりわたし砂浜で遊んでるし(笑)

ぽろぽろついつい自分のことばかり話してしまったような。
いろいろ聞いてくれてありがとう。わたしも言いたいことを素直に
こぼしていたよ。今度は冷凍じゃない香箱がにを囲んで(囲まれて?)
一緒にお酒を飲みたいなあ。a.k.a.もまた行きたいぞ。
昨日こちらにある能登料理のお店でノドグロを食べたんだけど
一夜干しだったのであのフワフワトロトロ感がなくて不本意だったよ…。

投稿: アッキー | 2008年4月 5日 (土) 01:27

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